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失火の責任(2)~賃貸住宅の場合~

ちょっとした不注意(軽過失)により火災を発生させ、隣家へ損害を与えた場合は、民法の特別法「失火の責任に関する法律(以下失火責任法)」により民法の「不法行為責任」が適用されず、損害を賠償する義務が発生しないことは前回ご紹介しましたが、アパート、マンションなどの賃貸住宅にお住まいの方(借家人)が、火災を発生させた場合はどうなるのでしょうか?
具体的な事例を挙げてご紹介しましょう。
AさんはXさん(家主)のアパートに入居していましたが、ちょっとした不注意(軽過失)で火災を発生させてしまい、Aさんの居室が焼失するとともに、隣室のBさんが賃借している居室にも延焼してしまい、Bさんの居室と家財が焼失してしまいました。

■AさんとBさん(隣室)との関係
この場合は「軽過失」による失火であり、前回ご紹介したとおり失火責任法が適用され、AさんにはBさんの損害を賠償する義務は発生しません。(失火の原因が「重過失」や「故意」の場合は、民法709条の「不法行為責任」に該当し、Aさんは損害賠償責任を負うこととなります。)

■Aさん(借家人)とXさん(家主)との関係
Aさんと家主であるXさんとの間には入居時に賃貸借契約が結ばれていますので、一般的にAさんはXさん(家主)に対し、建物(その戸室)を原状に復して返還する義務(借用物返還義務)があります。この場合は失火責任法が適用されず、民法415条の「債務不履行」(借用物返還義務の履行不能)による損害賠償責任が発生します。
したがって、Aさん(借家人)は、Aさんが賃借している居室部分につき、Xさん(家主)への損害賠償責任を負うことになります。
(Bさんが賃借している居室については、AさんにはXさん(家主)への債務不履行による損害賠償責任は生じません。)



以上のことを整理すると下表のとおりとなります。
失火の原因 隣家・隣室への賠償 家主への賠償
軽過失による失火 損害賠償責任を負わない
(失火責任法の適用)
損害賠償責任を負う
(民法の債務不履行責任)
重過失または故意による失火 損害賠償責任を負う
(民法の不法行為責任)
損害賠償責任を負う
(民法の債務不履行責任)

賃貸住宅にお住まいの方の家主への賠償は、火災保険の特約である「借家人賠償責任担保特約」の対象となります。また、重過失や爆発による隣家・隣室への賠償は、「個人賠償責任担保特約」の対象となります。(いずれも、故意の場合等は、免責事由に該当する場合があります。)
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